最高裁判所第一小法廷 昭和35(あ)2861 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人上山武の上告趣意について。
所論は、原判決は、被告人らに対する関税法違反被告事件について、犯罪貨物の
所有者でない犯人に追徴を命じている点において、最高裁判所又は高等裁判所の判
例の趣旨に違反しているというのである。
しかし、関税法一一八条が、犯罪に係る貨物を没收し、または、これを没收する
ことができない場合にその没收することができないものの犯罪が行なわれた時の価
格に相当する金額を犯人から追徴するとしている趣旨は、単に犯人が現実に取得し
た不正の利益だけを剥奪しようとするのではなく、むしろ国家が関税法規に違反し
て輸入した貨物又はこれに代わる価格を犯人連帯の責任において納付せしめ、もつ
て密輸の取締を励行しようとするに出たものと解すべきであることは当裁判所の判
例とするところであり(昭和三四年(あ)一五八二号同三五年二月一八日第一小法
廷判決、刑集一四巻二号一五三頁参照)、共犯関係のない数人の者において、順次
同一の違反貨物が売買された場合には、各犯人にそれぞれその物の価格に相当する
金額を追徴し得ることは、右判例の趣旨によつて明らかなところである。
ところで本件についてこれをみるのに、本件は数人の犯人が、たとえその取扱つ
た密輸時計の一部に共通するものがあつても、それぞれ別個独立に買受、保管、売
却の斡旋等をしたという案件であるから、各被告人に対しては、各自の犯罪に基づ
き、それぞれ別個独立に没收又は没收に代わる追徴をなし得るのは当然のことであ
り、従つてこれと同趣旨である原審の判断には、なんら当裁判所の判例と反すると
ころはない。
所論第六に引用の当裁判所大法廷の判決(昭和二六年(あ)三一〇〇号同三三年
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三月五日宣告、刑集一二巻三号三八四頁)は、共犯者が共に起訴された場合におけ
る旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)八三条三項による追徴
についての判例であつて、事案を異にし本件には適切でない。
また、所論引用第三の仙台高等裁判所秋田支部の判決は、昭和二七年(あ)二九
九一号同三三年六月二日当裁判所大法廷判決(刑集一二巻九号一九三五頁)の趣旨
に反するものであり、同第四の東京高等裁判所の判決は、本件と事案を異にし、本
件に適切ではない。
所論はなお、大阪地方裁判所及び神戸地方裁判所の各判決の趣旨にも反する旨主
張するが、右各判決は、刑訴四〇五条三号にいう判例に該当しないから、適法の上
告理由とならない。
それゆえ論旨はすべて採るを得ない。
よつて刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
昭和三六年九月二一日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 高 木 常 七
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 下 飯 坂 潤 夫
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